卒業を間近にした俺たちにとって、学校はほんまに憂鬱なもんやった



全国も終わり、テニス部一同は後れを取っていた勉強に頭を切り替え、



今更やけど授業に集中し始めた



勿論、受験も近いわけやし本格的に勉強せなあかん気持ちも分かる




けど、俺には勉強する動機が無かった



高校に行っても、勉強が追いつけんくなるとは思わんし、



受験やって、推薦で充分志望校に入れる




テニスも出来ず、いわゆる「暇」が出来た時、



ふと、彼女の事を思い出した










「……










何時からやろう、彼女が俺を避け始めたんは





















相対カリキュラム 1






















「白石くん、おはよー☆」



「ああ、おはよ」










毎日毎日ご丁寧に挨拶をしてくる同級生に俺は少しうんざりしながら答えた



これ以上関わるんも面倒やし、と俺は「じゃ、」と残し自分のクラスへ足を運ぶ











「 (しばらく、あいつとも会ってへんな)」











同級生の女子に挨拶されたことで、俺はかなり長い間、と顔を合わせてへんことに気付いた












「(前は普通に、挨拶しとってんけどな…)」











昔、俺たちは異常なまでに仲が良かった



お互いの家に行くのも当たり前で、付き合ってんちゃうか、と言う噂も流れた







俺が、彼女に惹かれてたんも、事実








けど、急に彼女と俺の関係は崩れた



が突然俺を避け始め、俺たちが会話を交わす回数は急激に減った



俺が彼女のクラスに行っても、彼女は顔を強張らせ、俯き加減に、こう言う











「――ごめん、お願い…ほっといて」











原因は未だ不明なまま。俺が悪いんやろうけど、自分では彼女に悪い事をした覚えは無い



俺は重い足取りのまま、自分のクラスへと進んだところで、ピタリと足を止めた











「……」











俺のクラスの前で、楽しそうに会話をしている女子。



やった



しかも喋っとる相手は謙也




確かに最近、は俺のクラスに頻繁に来ていた




――謙也と、逢うため











「っ…」












俺は黙って唇を噛んだ



あほか、俺は。何謙也に嫉妬してんねん



溜息を吐き、俺がそのまま黙って通り過ぎようとした時



前方で「じゃあね」と言う声が聞こえ、俺はハッと顔を上げた




案の定、は自分のクラスへ帰ろうと、



つまり、俺の方向に歩いて来た











「あ…」












は小さく声を漏らし、そして慌てて顔を背ける



そしてそのまま、俺の横を通り過ぎようとした





俺はそんな彼女の態度に耐え切れなくなり、無意識のうちに彼女の腕を掴んでいた













「っ…!」



「何で、俺の事避けるん?」



「蔵っ…」



「放課後、残ってくれへん?…ハッキリさせようや」












彼女はビクッと身を震わせた



俺の声色に驚いたのか、怯えたのか。そんなの今はどっちでも良い




俺が、真剣に見つめていると、彼女は小さく、頷いた











「じゃあ授業終わったら、のクラス行くから、待っとって?」



「うん…」











彼女は困ったように、弱弱しい声で答えた



こんな見たん、初めてや




何時からや。何時から、こんな関係になってしもたんや











「…じゃあ」



「あっ…うん…」











俺は素っ気無くそう言い、の腕を離した



彼女は何か言いたそうだったが、今の俺にそんな余裕は無い




これ以上一緒に居ると、俺が、彼女を滅茶苦茶にしてまう




俺は彼女のほうには振り向かず、自分のクラスに足を踏み入れた



それと共に、忍足が楽しそうに他の女子と喋ってるんが視界に入る











「ほんま、何やねん…」









俺には、そう呟くしかなかった




何で、は、俺を避け始めた?




結局いつも答えは出てけえへんのに












「(狂わされっぱなしや)」













ずっと、好きやった



嫌われたくなかった