もう絶対シングルスなんてやりたいと思わんし。何あれ、よくみんなシングルスなんて出来るわ。ほんま尊敬します。だってな、あんな孤独を感じてまうのになんでテニスなんてしてられるん?それどころとちゃうやろ!ボケがぁ!って感じ。ほんまにうちには怖くてテニスどころじゃなかったし。コートには味方は居らんわ敵しか居らんわで、敵もひとりなはずやのに、なんか慣れてるし、怖すぎて応援とか聞こえるか!言う話やわ。ようは、孤独を感じ過ぎて凄く不安になって周りの応援どころじゃなかったっていう話。あれやね、応援ってのはあってないようなものやねんな。シングルスでは。ダブルスではしっかりと応援貰ってモチベーション上げてたで?そんなんはどうでもいいねん。だから、シングルスをやってて笑える人ってすごいなって思った、その時初めて。前まではダブルスが出来ひんからシングルスやってるんやろ?なんて馬鹿にしたようなことも言ってたけど今はそんなことも言えへん。シングルスプレイヤー様々やね。だからかな?シングルスプレイヤーでしかもその上テニス部の部長で全国大会とか行っちゃってる白石がもうめっちゃ気になって気になってしゃーないねん。




こんなことを言っているんやしお分りのようにうちはダブルスプレーヤーです。テニスやってる人の間では結構有名人やったりもするねんで?ていっても、この前のシングルスの試合でもう評判落ちまくってるやろうけど。この前うちの相方(ダブルスのパートナー)が怪我したから、うちは嫌やっていったのに無理やりシングスに出さされた。結果は惨敗で、相手はめっちゃ無名の相手やったから尚のこと、うちもへこんだし、周りの態度も少し冷たくなった。周りって言っても友達とかじゃなくて、あれやね!あれ雑誌の記者の人とか!うちの学校男子テニス部強いからそのついでとかでちょっと来てくれたりしてたんやけど、今はもう空気のように扱われてます。別に良いけどね、そんなん気にせーへんし。元々ちょっと鬱陶しかったってのもあるけど。でもまぁ、へこむかへこまへんかって言ったらちょっとへこんでる訳で周りもちょっといつもより優しいわけで、それにちょっと調子こいてたりしたら相方が際どく調子乗ってるんに気付いて「お前へこんでへんやろ!!」っていわれた。へこんでへんって言ったら嘘になるけど、周りがそんなに気にするほどへこんでへんし、うちはそういう相方の気の使い方(やと思いたいね)がめっちゃ好き。サバサバしてて、それでもほんまにへこんでる時は、一番に気付いてくれてしかも話を無理に聞こうとせずにただ側にいてくれたりして。そういうところにめっちゃうちは救われてるよ。そんなん本人には恥ずかしすぎてよう言わんけど。でも相方も分かってくれてると信じてる。言葉じゃなくて態度で分かってくれるはず・・・・っ!ここら辺はうちは相方じゃないから分からんけど。あっちも何にも言わんからそんなもんで良いと思うしこの関係に満足してる。


今は昼休みでいつもはいろんな子と食べるんやけど今日は相方がふたりで食べたいって言ってきたからふたりで屋上で食べてる。まぁうちの愛しの相方のことや何か話したいことでもあるんやろ。その程度にしか考えてなかった。

「で?なんで今日ふたりで食べたいとか言い出したん?」

うちが尋ねる。話を聞くが今は昼休みご飯を食べながら話す。お弁当箱を開いている相方と、いつも買い弁でいつでも食べる準備万端のうち。相方が弁当を開いているのを横目で見ながらイチゴミルクを胃に流し込む。甘い、美味い。

「いや、ふたりの方があんたの為やと思って、白石となんか進展はあった?」

そんな話やとぜんぜん思ってなかったうちは、飲んでたイチゴミルクを吐き出した。ってか吐かないように口で抑えたけど指のすき間から少し溢れた。しかもそのイチゴミルクが自分の鼻にも入ってきてい痛い。涙目になり咳込む私を相方は一言で突き放す。

「ゴホっ!・・・・うぉえきも、ってか鼻めっちゃいたい。」

「汚い」

そう言いながらうちにティッシュを渡してくる。気の聞く娘さんやね、きっと良いお嫁さんになるよ。ってちゃうちゃう!何でその話が今出る?白石のこと誰にも話してないって!何で知ってる!?話した?話した気もしなくはないけど話してないはずやぞ?だって恥ずかしいやんか。

「ケホ、おぇ汚いなぁごめんってなんでやねん!」

汚いところを見せてしまったことをとりあえず謝る。だってまぁ付き合い長いといってもこういうところは見せるの初めてやし。周りの男子はめっちゃ笑ってるし、逆に女子は引いてる。これは仕方ないからみんなにもごめんって後で言わなあかんなぁ。めんどくさ。そんな感じで周りに目を向けてると相方が答えた。

「何がやねん」

そのですね、なんか絶対にうちあなたには勝てそうに無いです。なんかもうあれですね、かかあ天下やね。ってことはうちは夫か?なんでこんなんと結婚・・・・いや素敵な奥さんになると思うけどってか物理的に無理やろ!うち女、相方も女。無理やろ!!ほんまこのアホなうち!

「いや、あの・・・・白石のこと話したっけ?」

うちがそう言うと、相方はお弁当を食べているからか、口をモゴモゴと動かしている。あー、その空揚げ美味そう・・・・食べたいなぁって目線を送ると相方は口を動かしながら頷いた。それは食べても良いという許可が下りたということでさっきまで食べてたお握りを屋上の床に置くのはきたなそうやから、コンビニの袋の上に置いて空揚げを戴いた。うまー!想像した通り空揚げはものすごく美味しかった。その味に感動しているとようやく口の中のものが食べ終わったのかうちの質問に答えた。

「見てたら分かる、いっつも白石見てるもんあんた。」

付き合いも長いしな、そう言いながらまたおかずを口に運ぶ。うちも一つ目のお握りを平らげた。お弁当を買ったら良かったななんて今さらながらに後悔。でもまぁお握り美味いし良いけど。明日はお弁当にしようと思いながらも少し相方の言葉に感動。やっぱり一番早くうちの変化に気付いてくれた。友情やねぇと思いながら少し恥ずかしくなる。いつも見てたんや。クラス一緒やし部活も女子と男子で離れてるけど部室とかは隣りやし。よく会うからなぁ、喋りはそこまでせんけど、白石もうちに結構気付いてくれるし。嫌われてはないとおもう。まぁ、これも友情やねぇって感じ。悲しいことに。

「うち、いっつも見てる?」

「うん、無意識やったん?」

少し驚いたように相方は言った。無意識ですよ!特にいつも何も考えてませんよ。自然に白石に視線がいってたと思うと恥ずかしく思った。しゃーないやん!好きやねんもん。授業中なんて寝てるか漫画読むか携帯でメールするかボーッとするかしかないやん!

「・・・・どうしたらいいとおもう?」

うちがそう真剣に聞くと、相方は笑い出した。何で笑うねん!って聞いたら顔がおもろいって言われた。いや・・・・よく言われるけど・・・・よく言うのあんたやけど・・・・こっちは真剣に聞いてるんやっちゅーねん!こういう時は笑いなや!変顔してる時には鼻で笑う癖にこういう時だけ爆笑ってどやねん!一通り笑い終えたところで相方も真剣な顔になって答えてくれた。笑う時は笑う、答える時は答える。そういうのはいいなぁと思う。

「いや・・・・どうするも何もあんたはどうしたいん?」

どうしたいんやろ・・・・聞かれると結構困るかも、どうもしたくないってのが本音やから。でも今のままでいると確実にうちの気持ちバレてしまう。それはなんか嫌やな。どうもこうも、相手はこっち見てないねんから(多分)どうしようも無いと思う。これは切実に。

「白石がうちのことちょっとでも気があったりしたらいいねんけどな、残念ながら無さそうやし・・・・」

難しいところですね。なんて思ってたら相方は箸で持ってた卵焼きを屋上の床に落とした。もったいない!そう思ってなんとか食べれるとこだけ食べようとしたら相方に卑しいって言われるし。なんでやねん!もったいないやんか!!そう言ったら、あんたは将来ホームレスでも立派に生きていけるし、地球が滅亡してもあんただけはゴキブリと一緒に生きていけるわ。って言われた。それは、褒めてるんやろか?って思って聞いたら、褒めてるわけないやんって真顔で言われた。ちょっと悲しくなった。そんなしょうもない話から元に戻して本題に入った。

「・・・・白石はあんたのこと嫌ってはないと思う」

少し曖昧な言い方に疑問を覚える。いつもハキハキと物を言うタイプの相方やのに何でか今のは曖昧。

「どういうこと?白石はうちのこ・・・・」

「何?俺の話?」

噂をすれば陰。とはこのことやね!ほんまビックリして二つ目のおにぎりを床に落としてしまった。しかも具のとこ。食べても良い?って相方に聞くとにっこりと笑った相方が友達がひとり減っても良いなら食べても良いで。って。確実にその友達あんたやろ!って思いながら二つ目のお握りをコンビニの袋の中に入れた。少しうちの目には涙が浮かんで。ごめんよお握りさん、次出会った時はちゃんと食べてあげるから!!って叫びながらゴミ箱に捨てに行った。元はと言えば白石が悪い。どれだけ好きやと言ってもお昼ご飯を奪われたら怒らないはずがない。食べ物の恨みはなんとやら。そう思って白石の頭目がけて平手打ちを御見舞いした。

「アホ白石!うちの昼御飯無くなったやんか!!」

うちがそう言うと叩かれた頭を摩りながらうちの方に振り向いて金太郎に向ける笑顔をうちに振り撒いた。お、怒ってはる・・・・。どうしよう、ど、毒手?そんなん、あれやんちょっと頭しばいただけやん!そんなんで怒らんといてーな!どうしようどうしようって思ってたら、相方がうちを助け出してくれた。流石相方!!付き合いが長いだけあるわ!!

「そろそろ、 死んでまうから許したって。」

休み時間にお握り金太朗と食べてたやん。何が昼ご飯やねん。」

少し怒ったように見えますが見えなかったことにしよう。やばかった。殺されるとこやった!!金太朗と一緒に食べたお握りはおやつですー!そこんとこ間違えやんといてください!とは流石に言えへん!!それ言ったらか、確実に殺 さ れ る!!ここは大人しく謝っとくか!!

「あ、白石さんすいませんっした!全部自分が悪かったっす!反省してまーす」

うちがそう言うと白石が腕に巻いてた包帯を取りながらうちに迫ってくる。

「お前絶対してへんやろ。死なすど」

「いや、キャラちゃうから!一氏になってるから!!」

うちが迫られてることより、キャラ変わってることに突っ込んでる相方。なーんでやねーん!!ほんま頼みまっす!助けてください!助けてください!!死んじゃう!!死んじゃうって!!誰も助けてくれへんのはもう目に見えてたから自力でげようと思って強硬突破で白石のいる方に走り出した。白石やしよけてくれるやろって思ったのに、よけてくれなかった。その所為でうちは白石に抱き着く形に。え?よけてや白石ーって言おうと思って言えへんかった。だって、だって!!白石がうちのこと抱きしめてるから!!周りがめっちゃビックリしてるのが分かる。あって近くにいてた女子とかめっちゃ騒いでるもん。男子は冷やかしてるし。みんなビックリしてるんは分かってるんやけど、一番ビックリしてるんはうちやから!!

「え・・・っと」

抱きしめられた状態のままでとりあえず離れてーとか思いながらそういう雰囲気を醸し出す。いや、嬉しいよ?嬉しいけどでも恥ずかしいの方が勝つやろそら!!めっちゃ恥ずかしいちゅーねん。周りはめっちゃ見てるし、相方になんて絶対ニヤニヤ嫌な感じの顔してるやろうし。そう思って白石の胸にある腕を伸ばして離れようとした。

「・・・・好きや」

「あ?そうなん?ってえぇぇぇぇぇぇえええ?」

いやいや、ビックリやろ。何その告白の仕方って白石うちのこと好きやったんですか?もう何にビックリすれば良いか分からんわ!突込みどころ多すぎるから!!ほんまめっちゃあせるってえぇぇぇぇぇえええ?うわ、どうしようっちゃ恥ずかしくなってきた。白石に嫌われてはないと思ってたけどそれはないやろ!絶対友情の好きって感じやと思ってた。どうしようどうしよう!!とりあえず返事。

「・・・・」

「あ、うんうちも」

うわ、めっちゃ恥ずかしい!!ほんまもうどうしよう!!顔絶対赤いし!!このままずっと白石に顔隠しといてもらいたい。あ、でもずっとこのままやったら一生顔赤いの治らへんわ!!

「うん、知ってる。」

「え?ん?ちょっ待っ・・・・はぁぁぁぁぁあああ?」

何で何でみんな知ってるん?ずっと見てたから?うちがずっと見てたから?もういやや、学校行きたくない!!不登校上等やわ!!

「だって俺ずっと前から のこと見てたし?」

「何それ、い、いつから?」

それはシングルスの試合の少し前からやったらしい。因みにうちの顧問にシングルスさせろって言ったのは白石やったらしい。ダブルスが出来ひんからシングルスなんやろって言葉を聞いてたらしい。いや、もう白石さんに完敗です。






部活も終わって、上手いこと付き合っちゃうことになって今までは相方と帰ってた通学路を白石と歩く。別に話すことに困ったりはせーへん。だってテニスのこと話せるし、しかも相手は尊敬するシングルスプレーヤー。気になる質問とかしてもいいよな、しちゃえ。

「シングルスってコートで独りやんか、怖くないの?」

うちがそういうと、白石は少し考えたあとにうちの質問に答えてくれた。考えてる間うちは下に落ちていた石を蹴ってみる。意外に結構飛んでビックリした。

「まぁ、そうやな。でも相手を負かした時の快感はダブルスよりシングルスの方が実感できると思うで。」

そうやな、ダブルスやったらパートナーに助けられまくって勝ったりする時もあるもん。そん時は負けた時より悔しかったりする。一番悔しいのは負けたうえにめっちゃパートナーに助けてもらうこと。うちの相方はそういう時に慰めずにあかんかったところを正確に教えてくれるからお互いに成長出来たんやと思う。そう考えるとやっぱりうちはシングルスよりダブルスの方が好きやな、勝った時どんだけ嬉しくても独りで成長はうちには出来ひんから。相方がいてやっと一人前やねんなぁ。勝った時の快感ってあれやんな?白石の決め台詞チックなあの台詞。

「・・・・エクスタシーですか?」

笑いを堪えてそう尋ねると、頭を軽く叩かれた。でもまぁおもろいねんもん仕方ないやんか!!なんやねん!エクスタシーって!!ほんま初めて聞いた時、目の前で笑いそうになってめっちゃ危なかったんやから!流石に目の前で笑ったらあかんやろうと思って試合見るどころじゃなかったし。でもまぁ、そこも好きなんですけど。で、もう一回エ、エクスタシー・・・・ですか?って聞いたら白石からエクスタシーですって返ってきて、もう笑いをこらえられへんかった。

「ははは!絶対アホや!!白石アホや、毒手とか絶対嘘やろ!エクスタシーやろ!!」

笑いまくってたら、めっちゃ白石赤くなってました。意外に可愛いところもあることに気付いた。カッコイイばっかりやと思ってたけど人並みに照れるんやね。そんなところもこれから見られるんかなって思ったらめっちゃ幸せなことに気付いた。















幸せの小道
(意外に可愛いとこあるんやね白石)(何言ってんねん)















あーこれからがめっちゃ楽しみ。いつかうちもシングルス出来るようになりたいな。いや別に相方と離れたいわけじゃなくて、白石と釣り合えるようにって何恥ずかしいこと言わせてるんさ!って勝手に言ったんはうちですね。じゃなくて自信を持って白石の横に居ることが当たり前であって、白石が誇れるようなそんな彼女になりたいってことです。